「交渉」は、私たちの日常生活や仕事の場面で、頻繁に登場します。「交渉」に勝った、負けた、という話をよく耳にしますが、勝負事のように思っている人もいるかもしれません。
また、「自分は交渉は苦手だ」、「悪徳交渉術にだまされた」というようにネガティブなイメージを持っている人も多いことでしょう。
交渉に勝つことを目的とした交渉術があることも事実ですが、ここでは「お互いの満足度を高める双方向のコミュニケーションプロセス」として「交渉」を捉え、それを「生産的交渉」と呼んでいきます。
「生産的交渉」については、Kisobiコンテンツプロデューサーである高杉尚孝(ヘンリー高杉)の著書「実践・交渉のセオリー」で解説されています。この内容をベースに、数回にわたって、生産的交渉のコミュニケーション・テクニックをご紹介していきます。
生産的交渉が必要な背景
長年の取引先から、取引会社を絞り込みたいという理由で、取引条件の見直しを求められている。
(製鉄会社の営業担当者)
会社が外資系企業の傘下に入ったため、社内でも自分の考えを明確に表現するように求められることが増えてきた。自分の処遇も会社との話し合いで決めることになった。
(自動車メーカーの人事担当者)
不況を反映してか、話術巧みに迫ってくる詐欺まがいの商法が急増している。悪徳商法から身を守る自衛策を身につける必要がある。
(消費者相談所の窓口担当者)
上に挙げたコメントは、私たちの身の回りで起きている大きな環境の変化によって生じた新たな経済的・社会的ニーズに、対応せざるを得なくなっている状況を表しています。
新しい関係構築と自衛のためのコミュニケーション技術
社会構造の変化に伴い、日常生活や仕事の場面においても、利害関係者との関係のあり方が変化してきています。他者と新しい関係を築くためには、当事者同士がお互いの利益を守るために、正当性をもって「交渉」する必要があります。
さらに、現代のように成熟した社会では、自由度も高い反面、凶悪犯罪や詐欺などの事件も増えています。これらの危険から身を守るためにも「交渉」の技術が役に立ちます。
なぜ「生産的交渉」が大切なのか
短期的な取引などでの例外はあるものの、長期的に良好な関係を存続させたい場合、当事者の片方にのみメリットがあるような交渉は有効ではありません。
例えば、売り手と買い手の関係を考えてみた場合、もし売り手のみに利益の出る交渉を続ければ、買い手は離れていってしまい、結果的に売り手も商売ができなくなってしまいます。逆に、買い手のみに利益がある場合は、いずれ売り手はつぶれてしまうでしょう。
お互いの利益を最大にする「生産的交渉」以外には、双方が長期的に良好な関係を築くことはできません。
生産的交渉のステップ
生産的交渉は、次の5つのステップで進めます。
1)交渉の目的を考えると同時に、交渉決裂時の次善策を明確にする
2)自分と交渉相手の強み、弱みを洗い出す
3)お互いの満足度を高める、客観的基準を用いた代替案を作成する(仮説)
4)実際の交渉を通じ、お互いの代替案を吟味し、必要の応じて改善する
5)双方の満足度を最大化する合意案をまとめる
以上、生産的交渉とは何か、について説明しました。
次回からは、生産的交渉の基本テクニックについてご紹介します。
参考書籍
実践・交渉のセオリー―ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック
- ビジネスモデルが会計の数字を決める(後編)|大津広一氏インタビュー - 2014年11月4日
- ビジネスモデルが会計の数字を決める(前編)|大津広一氏インタビュー - 2014年10月30日
- ビジネスリーダーになるには会計・財務スキルは必須 - 2014年9月12日