2014年ソチ冬季オリンピックでは熱戦が続いている。
日本人選手のメダル獲得のニュースも伝わってきている。リアルタイムで目当ての選手の競技を見ようと、毎日寝不足の人も多いことだろう。
「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」
(オリンピック憲章 2011年版 JOC)
とはいうものの、選手は国旗をまとい、表彰時には国旗が掲揚され、国家が吹奏される。選手は国を背負って勝負に臨む。まわりも同じ国民として応援する。日本選手団に国民の期待がかかる。
自分への絶対要求がミスにつながる
選手は「その期待を絶対に裏切ってはならない!」と自分に要求しがちだ。
「絶対にメダルを取らねばならない」、「絶対にミスを犯してはならない!」とも考えやすくなる。
確かに、オリンピック級の選手になると、本番でミスをするかしないかが勝負の分かれ目となる。
普段の実力を充分に発揮できれば、誰が勝ってもおかしくないレベルにある選手ばかりだ。
悩ましい事に、「絶対にミスを犯してはならない」と要求すればするほど緊張が増す。なぜなら、どんなに頑張ってみてもミスをする可能性を100%払拭するのは不可能だからだ。
ミスのない完璧なパフォーマンスを要求すればするほど、ミスは絶対に起きてはならない最悪の悲劇になる。
緊張は増し、強い恐怖心に見舞われる。結果、普段なら起こさないようなミスをしてしまう。
今でも記憶にあるのは、1994年リレハンメル大会のジャンプ団体の原田雅彦選手だ。金メダルの懸かった最後のジャンプ。普通であれば何でもない距離に届かなかった。本人もさぞ悔しかっただろう。
荒川静香選手に学ぶ「人事を尽くして天命を待つ」
では、このジレンマにどう対処したらよいのだろうか?
2006年トリノ大会フィギュアスケート金メダリストの荒川静香選手に学ぶとよいと私は思う。
荒川選手は、周りの選手が、緊張のあまり続けざまにミスを犯すのをよそに、ひとり落ち着いた優雅な演技を披露した。(参考動画)
なぜ落ち着いていられたか?というNHKインタビューに対する彼女のコメントを見てみたい。
「私は、金メダルを狙ってというよりは、もう自分の最高の演技をして、それで結果を待とうという考えだったので、最初から結果にこだわるのではなく、まずは自分のできることを全て実力どおりに発揮したいなという気持ちの方が強かったので、もう、ひとつひとつ、演技に集中していって、本当に、でも、その意識を変えることなく、最後までいくことができたことかな」
「自分のできることを全て実力どおりに発揮したい」
これは、重圧を管理する上でとても良い思考だ。まず、これは、後ろ向きな「ミスをしてはならない」という失敗回避ではなく、前向きな目標達成に向けての思考だ。同時に、実力を出すという自分のコントロールしやすい要素に注目している。
さらに、それを絶対的な要求ではなく、「発揮したい」という強い願望として表現している。コントロールしやすいからといって、「絶対に実力を出さねばならない」と要求するとかえって力んでしまうことを知っているのだろう。
「(金メダルという)結果にこだわるのではなく」
オリンピックに出場するレベルの選手であれば、金メダルを取りたいはず。最高の結果を目指すのは決して悪いことではない。同時に、結果をコントロールすることは不可能でもある。
事実、必ず優勝できる保証などどこにもない。荒川選手は理解していたのだろう。コンロトール不能な結果にこだわっても不毛であることを。
先人の言葉を借りれば、「人事を尽くして天命を待つ」
国を超えて、ソチ大会全てのアスリートに送りたい言葉だ。
by 高杉尚孝(たかすぎひさたか)
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<参考書籍>
実践・プレッシャー管理のセオリー ~ビジネスパーソン必修 メンタル・タフネス強化のセルフ・コーチング術(高杉尚孝著)
- 職場のコミュニケーションをよくする「ストレス軽減思考法」 - 2015年6月13日
- 【英語の丁寧表現】状況に応じて使い分けてみよう! - 2014年8月7日
- 英語の上達法【レシテーション】(暗唱法) - 2014年7月8日