2月に入り、元ヤンキースの松井秀喜氏が、巨人軍の臨時コーチを務めている。
朝日新聞(2014.1.17)によれば、「うちに彼ほどのキャリアを持った人はいない。世界で通用するメンタルを注入して欲しい」と、原監督は精神面のアドバイスに期待しているとのこと。さらに同紙によると、白石球団オーナーは「巨人に戻ってきて(将来は)監督として引っ張ってもらうことを切望している」と語ったそうだ。
メンタル面の注入を望むなら、松井氏は正に適任者であろう。松井氏の精神面の強さは抜群だ。彼はヤンキース時代あの2009年ワールドシリーズでのMVPの他に、あまり知られていないが、同じ年にクラッチ・パフォーマーなる賞も受賞している。これは、ピンチでとても頼りになるプレーヤーに贈られる賞だ。
ヤンキース時代のトーリ元監督も「松井は重圧がかかる場面でいつもクールでいられる。カギになる状況での強さは健全だ」と語っている。さらに、「鋼鉄の精神の持ち主。体内に冷たい水が流れているようだ」とも。トーリ監督の見立てでは、松井氏は水冷式だった訳だ(笑)。
巨人軍の選手たちは松井氏から多くを学ぶことだろう。
その一つは、ヤンキース入団時のコメントに現れている、「いらないプレッシャーを自ら作らない」彼の思考法に違いない。
松井氏曰く、
「周囲の期待は、僕にコントロールできない。僕は自分でコントロールできる部分だけを意識してプレーしたい」
(2003.4.15 日経新聞)
これは、自分のコントロール下にないことがらと、コントロール下にあることがらを分けた上で、後者にエネルギーを集中するという思考だ。平常心を保つ上でとても有効だ。
自分のコントロール下にないことがらを操ろうとするのは大きな心理的な動揺を生み出す。
例えば、急いで車を走らせている時、赤信号に捕まる。「早く変われ!」と、念力を送ってみてもあまり効果はない。苛立が増すだけだ。信号は変わる時に変わるのだ。
確かに周りの期待もそうだろう。周囲は言いたい事を言うものだ。周りの言動を変えてやろうと力めば力むほどパフォーマンスに悪影響を及ぼす。松井氏はそこをしっかりと理解できているのだろう。
同時に彼は、「僕は自分でコントロールできる部分だけを意識してプレーしたい」とも言っている。その通り、自分のできることにエネルギーを注力する方が得策だ。
しかもそれを、「意識してプレーしたい」という願望として彼は表現している。コントロール下にあるのだからして、「完璧に制御しなければならない」と力んでいない。
自らのコントロール下にあっても、力を抜いてアプローチした方が、よいパーフォーマンスにつながりやすいことも理解しているのだろう。
松井氏には、新たな立場で、現役時代以上の活躍を期待してやまない。
無論、ご本人は、そんな周囲の勝手な期待は気にしていないだろうが…
by 高杉尚孝(たかすぎひさたか)
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