松井秀喜が現役を引退した。
「結果が出なくなった。20年間の野球人生に区切りをつけたい」
常にチーム勝つ為に何をできるかを意識し続けた。
チームの勝利に貢献できなくなった今、彼なりの美学を追求した、潔い決断だ。
他方、ヤンキースへの劇的な移籍を見せたイチローは二年の再契約。
持ち味を活かし、更なる活躍を期待したい。
両選手を思う時、忘れられないのが、大分前にテレビ放映された二人の対談だ。
特に、イチローから松井に向けられた鋭いコメントを、松井がもののみごとに受け流す場面が印象的だった。
対談の後半、話題は「重圧」。
イチローは重圧に悩んでいるという。彼の表現を使えば「壁」。
確かに、彼のテレビ特集の主題には「プレッシャーと戦うイチロー」が多い。
絶対に結果を出さねばならないという強い信念からくる重圧だ。
結果の保証を自らに要求することで、とことん自分を崖っぷちに追い込む。
その重圧に苦しみながらも結果を出し続けて来た超人的なアスリートである。
イチローならではの偉業である。凡人はまねをしない方がよいだろう。崖から落ちるのが関の山だ。
他方、松井は、プレッシャーをあまり感じないという。
事実、松井のプレッシャーに対する強さには定評がある。
松井曰く、
「野球で溜まったストレスは、野球で取り返せばよい」
「美味しいものを食べて、ゆっくり寝て、次の日を迎えればストレスは溜まらない」
イチローはそれが理解できない。
「ほんとかよ」「そんなもんか」「おかしいよ」「あり得ない」
絶対に苦しいはずだと迫る。
それでも松井は、首をかしげて、それほどでもないと答える。
「もしかして、僕は、イチローさんほど自分を追い詰めていないのかも」
最後には、業を煮やしたイチローからの松井へのコメントは、
「無神経?」
いやな指摘だ。
「何を言う。失礼な!」
「そんな無神経な質問をする方がよほど無神経でしょう!」
思わず凡人は反発したくなる。
だが松井は違った。うなずいた上で、
「悪く言えば、そうかも知れませんね」
スーッと受け流した。
明らかに批判めいたコメントをムキになって反論するのは、相手の思うつぼ。
ネガティブな感情がむき出しになって、印象を悪くするだけだ。
対応の基本は、平常心をキープしながら、そういう解釈もあり得ると受け流すこと。
松井のすごいところは、イチロー本人を批判することなく、
「悪く言えば」と意地悪なコメント自体を解毒した上で、「そうかも知れませんね」と、相手のコメントをうまく受け流しているところ。
これぞ、グローバルリーダーに求められるコミュニケーションの極意!
正面からぶつかるのではなく、相手の勢いをかわすとともにうまくリードしている。正に、相手の力をディフレクトする、合気道的なコミュニケーションだ。相手や場に呑み込まれることなく、平常心をキープし易くなる。
イチローはそれ以上の追求をせず、野球という点では「よく作用している」とフォローした。。。
今後、松井には野球界の指導者として、イチローには現役メジャーリーガーとして、増々の活躍を期待して止まない。
イチロー・松井 対談動画
(イチローの「無神経?」発言は、5:55秒時点にあります)
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