私ごとだが、2013年に入り、そろそろマックブックの買い替えを考える時期に来た。四年目に入るとハードディスクの寿命も気になる。
機械的に動くハードディスクのない、マックブックエアーにするべきか迷うところだ。
そういえば、昨年、アップル社のCEOティム・クックによる新型iPadの発表プレゼンテーションがあった。
スティーブ・ジョブスが他界した後の初めての新商品のプレゼンテーションだった。
クックのプレゼンは先代とは異なる、複数の担当者によるチーム型だった。
スティーブ・ジョブスがあまりにもカリスマ的な存在であったことに加え、彼のプレゼンテーションがあまりにも洗練されていたために、アップルの他のプレゼンターはどうしても陰が薄くなってしまう。
これは仕方のないことかもしれない。
しかし、他に素晴らしいプレゼンターがいなかった訳ではない。
そのひとりが、二代目のエバンジェリストであったガイ・カワサキ。
(1997年アップル社イベントでの彼の講演ビデオを見つけたので、最後に掲載しておいた。画質はあまり良くないが面白い内容なので、興味のある人はぜひ見てほしい)
「はてなキーワード」の説明を借りれば、
エバンジェリストとは、
「自社の製品やサービス、ノウハウ等を、顧客・パートナーをはじめ世間に広くわかりやすく説明して回る役割をする人。開発者でありながら、PRの役割を担う人が多い。役職として採用している企業もある。また、自分が信奉する製品を、他人に勧めて広めようとする人のこと。元々は、複雑なIT技術を分かりやすく説明する役割をする人を呼びあらわすIT用語であったが、今では一般的に使用されつつある」
そもそもは、evangelistは「福音伝道者」のことだ。「改革運動者」という意味もある。ちなみに、新世紀エヴァンゲリオンのエヴァンゲリオンはここから来ている。ただし、エヴァンゲリオンという原語はない。
ガイ・カワサキは、現在ベンチャー・キャピタリスト(VC)として活躍している。ベンチャー・キャピタリストとは、未上場会社に株主として資金を提供して、上場後にキャピタルゲインを狙う投資家だ。
従って、彼は、資金提供を希望する数多くのベンチャー企業のプレゼンを日々受けている。
そのカワサキが提唱するのが、著書「起業成功マニュアル」の中で紹介されているプレゼンテーション「10/20/30」の鉄則。
起業家が、ベンチャー・キャピタルに投資を提案する際のプレゼンの法則である。長年に亘る、VCとしての経験から抽出された法則だ。
一般的なビジネスプレゼンテーションの資料作成にも通ずる内容なので紹介する。
そのエッセンスは3つ、
• 10: プレゼンをスライド10枚にまとめろ!
聞き手はそれ以上耐えられない。
百歩譲っても15枚。
それが上限。50枚なんてのは論外。
• 20: プレゼンを20分以内に終わらせろ!
たとえ持ち時間が60分であったとしてもだ。
本番では、必ずアクシデントが起きる。
• 30: 最小でも30ポイントのフォントを使え!
聴衆が読めない小さなフォントは意味が無い。
小さいと文字数も多くなる。
というものだ。
これらは必ずしもVC向けのプレゼンテーションに限った話ではない。
聴衆の忍耐力と能力を無視した、長時間に亘る、小さなフォントを詰め込んだ、無数のスライドによるプレゼンが実に多い実状に鑑みれば、ほぼ全てのプレゼンテーションに通ずる話だ。
ここに、厚労省の作ったスライドがある。ビジネスプレゼンテーションでもよく見かけるタイプだ。
- http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002fw16-att/2r9852000002fw56.pdf
- (出典:厚生労働省HP 雇用政策研究会報告書(案)骨子)
あまりにも多くの情報を詰め込んでいる。スライドのメッセージがまるで分からない。
一体、このスライドからなにを読み取れというのだろうか。そもそも、発表者はこのスライドをどう説明するのだろうか。
変わって、こちらはコンサルティング会社マッキンゼーのスライド。
同社が、経済財政諮問会議の専門調査会向けに作成した。一般的に入手できる情報だ。
- http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/special/assetsreform/07/item1.pdf
- (出典:経済財政諮問会議HP 資産債務改革の実行等に関する専門調査会第7回 本田桂子氏提出資料より)
情報を絞り込んだシンプルな作りであると同時に、何を伝えたいかが最上段に書かれている。
最小フォントは30ポイント以下だが、伝えたいメッセージのはっきりとしたスライドだ。
「10/20/30」の鉄則の更なる説明で、フォントサイズについて。とりわけ面白かったのは、スライド上の最も小さなフォンサイズを、
「聴衆の中で最も年長者の年齢÷2にすべし」
とのサジェスチョンだ。
仮に、聴衆の中での最年長者が48歳とするなら、スライド上の最も小さなフォントサイズは24ポイント。
56歳なら28ポイントという具合だ。
ガイは最小フォントを30ポイントにと言っているので、彼の想定している最高齢の聴衆は60歳という計算になる。。。
無論、プレゼンによって、スライドの枚数や時間など、具体的な数字はケースバイケースだ。
何れにせよ、「10/20/30」法の教えを意識しておくことは、いかなるプレゼンを実施するにも有益だ。参考にしたい。
ガイ・カワサキ講演ビデオ
(Apple WWDC ’97 A lecture by Guy Kawasaki)
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