プレッシャーに屈してしまう状況とは、「悪いマイナス感情によって、悪い行動に至ってしまう」ことです。前回説明した「ABC理論」に沿って整理すると、この部分は、C(結果としての感情・行動)に当たります。Cがあるということは、そこにはA(状況)とともに、Cの感情・行動を誘発したB(思考)が存在しているはずです。
悪い感情・行動(C)には悪い思考(B)が伴う
プレッシャーに屈した状況のように、悪い感情・行動(C)が誘発された場合、思考(B)も不適切な「悪い思考」であったと考えられます。
重要なプロジェクトのリーダーを任されたものの、プレッシャーに屈して、気力を失い出社拒否になってしまった人の例で考えてみましょう。
この「出社拒否」という悪い行動を生んだ「悪い思考(B)」は、次のようなものであったといえます。
・私は与えられた任務を全うせねばならない
・私は絶対に失敗してはならない
・私は期限までに結果を出さねばならない
・私はまわりの期待に応えねばならない
一見、これらの思考はどれも勇ましく、立派に聞こえます。どれも大切な目標であり、志でしょう。しかしながら、これらを「ねばならない」と「絶対要求」しているところに問題があります。
プレッシャーは客観的な実態としてそこにあるのではなく、当事者の思考によって作り出されているのです。
良い感情・行動(C)には良い思考(B)が伴う
プレッシャーに打ち勝つとは、プレッシャー状況において、「良いマイナス感情によって、良い行動をとること」です。
では、前述の出社拒否に至ったケースにおいて、良い感情・行動(C)を誘発させるためには、どのような思考(B)を持っていたら良かったのでしょうか?
このケースでの良い思考(B)は、次のようなものであったといえます。
・私は与えられた任務を全うできるにこしたことはない
・私は失敗しないにこしたことはない
・私は期限までに結果を出せるにこしたことはない
・私はまわりの期待に応えられるにこしたことはない
これらは、目標や志を「絶対的な要求」ではなく「相対的な願望」として位置づけているので、よい思考といえます。
このような相対的な願望としての思考(B)を持っていれば、プレッシャー状況において、ハッピーにはなれないとはしても、「悪いマイナス感情」や「後ろ向きの行動」を回避できる可能性が高まります。
良い思考(B)をすることにより、「心配」「不快感」「悲しみ」などの良いマイナス感情を選択できたと考えられます。
そうすれば、プレッシャーに屈することなく、粘り強く任務を遂行できたはずです。
タフネス思考を強化のための4つのステップ
タフネス思考を強化し、プレッシャー管理を行うためには、「プレッシャー時に、元にある悪い思考を良い思考へと修正することにより、悪いマイナス感情と後ろ向きの行動を、良いマイナス感情と前向きの行動へと転換する技術」を身につける必要があります。
意識的に反復する必要はありますが、比較的短時間での学習が可能である上、日常的に、実践かつ応用ができるのです。
タフネス思考の強化は、以下の4つのステップに沿って行います。
1)プレッシャーの元にある悪い思考を特定する
2)悪い思考を論駁(反論/否定)する
3)良い思考を発見する
4)良い思考をもとに、良いマイナス感情と前向きな行動を選択する
これらのプロセスに精通することにより、プレッシャーがかかっても、粘り強く能力を発揮し続けることが可能となります。
これらのプロセスの詳細は、また別の機会にご紹介します。
今日の内容は、Kisobiコンテンツプロデューサー高杉尚孝(ヘンリー高杉)の著書
実践・プレッシャー管理のセオリー ~ビジネスパーソン必修 メンタル・タフネス強化のセルフ・コーチング術
をベースに作成しています。
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