2013年2月の大相撲トーナメントにおいて、白鵬、日馬富士と、横綱陣が敗退するなか、西の大関・鶴竜が優勝した。本場所と違い、トーナメント方式の試合では、番狂わせが起こり易いので、見ている方は、面白い。
そういえば、2013年1月の初場所では、横綱・日馬富士は、今回のトーナメントで優勝した鶴竜を14日目に寄り切りで下し、千秋楽を待たずに優勝を決めた。結果、全勝優勝、2場所ぶり、5度目の優勝だった。
日馬富士は新横綱としてデビューした2012年九州場所で9勝6敗に終わり、批判を浴びた。2場所目で横綱としての初優勝、しかも全勝優勝を果たすことで汚名返上した。
「横綱としての資格なし」との批判もあった中の本場所。綱の持つ重圧に加え、汚名返上と、二重の重圧がかかったに違いない。
優勝後の日馬富士のコメントで印象に残ったのは、「ほっとした」の一言だった。
重圧からの解放感はさぞ大きかったことだろう。
そういえば、イチロー選手も、毎年の達成課題としていたメジャーでの200本安打を5年連続達成した時のインタビューで「ものすごく重い物がパーンとぬけていきました」とコメントしていたのを思い出す。
確かに、重圧からの解放感は気持ちのよいものだ。
長い間背負って歩いていた大きな荷物を降ろしたときの解放感は格別だ。
実は、この解放感を得るために、日々頑張っているビジネスパーソンが多いように思える。
「絶対に失敗してはならない」、「絶対に目標を達成しなければならない」という結果 の保証の要求から来る重圧は、確かに大きなモチベーションにつながる。
なぜなら、失敗は、絶対にあってはならない最悪の悲劇になるからだ。絶対にあってはならない最悪の悲劇を回避しなければならないという思いは、人を行動へと駆り立てる。
ただし、強力ではあるものの、これは、「恐怖心」を核としたモチベーションだ。
2008年、8年連続200本安打を達成して、100年の記録に並んだ際、イチローは、「出来ないかもしれないという恐怖が常にあった」と告白していた。
解放感を目指すモチベーションの場合、気をつけていないと、背負っている荷物をさらに重くする方向へと向かって行く。つまり、失敗した際の悲劇の度合いを増すことで、恐怖心を拡大する方向に向かうのである。
しかし、解放感による気持ちよさは、満足感や達成感とは違うように思える。
解放感は、言わば、荷物を降ろした、通常状態に戻った安堵感だ。つまり、ネガティブが無くなった状態だ。
他方、満足感や達成感は、通常状態よりもポジティブな状態を意味している。
大きな目標を達成したにも関わらず、そこで得られるご褒美が、ネガティブがなくなり通常状態に戻るだけなのであれば、どうも割に合わない。
鋭意努力の末、大きな目標をせっかく達成できたのだから、できるなら、よりポジティブな状態に変わりたいものだ。
by 高杉尚孝(たかすぎひさたか)
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