2週間ほど前に、GoogleがMOOCs(Massive Open Online Courses)の1つedXと提携して、新たなるオンライン学習プラットフォームを開発する、とのニュースが話題になった。(参照:edXブログ)
mooc.orgというサイトをオープンソースベースで開発し、edX参加大学(ハーバードやMITなど)以外の大学や教育機関、企業、個人などがコンテンツを配信できるようにするとのこと。YouTubeのオンライン学習版みたいなものになるという話もあるようだが、実際に登場するのは2014年の予定なので、どんなサイトなのか、ビジネスモデルなどは、まだ分からない。
いずれにせよ、現在MOOCsの話題の中心となっている大学講義をベースとしたオンライン教育とは、少し異なる話である。大学が母体となっているedXが、一般の人向けにオープンなコンテンツ配信環境を提供するというのが、興味深い。
Googleのねらいは?
“Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。”
(Google 会社情報より)
これに照らすと、オンライン教育の分野でも使命を果たそうという動きと言える。
Google Glassのように目立つプロジェクトではないが、Googleは1年ほど前からCourse Builderというオンライン教育プラットフォームの実験サービスを始めており、今回の提携はその延長線上にある。一方で、1つの営利企業でもあるので、長期的にはしっかりとビジネスも考えているであろう。
学習コンテンツにAdwords広告が表示されるのか、Google検索に誘導するのか、コンテンツ提供者に課金するのか、あるいは全く別のモデルか。将来性が不透明とされているMOOCsのビジネスモデルへのチャレンジでもあると思う。
今までのGoogleのビジネスモデルは、広告やシステム利用料には課金しても、コンテンツは無償提供がほとんどであった。ただ最近は、YouTubeの有料チャンネルや、Android携帯での有料アプリ販売にも取り組み始めているので、必ずしも無料に拘っているわけではないようだ。
競合するのはUdemyやiTunes U?
大学講義に限らず、誰もがオンライン学習コンテンツを提供できるプラットフォームとしては、すでにUdemyやiTunes Uなどがある。
Udemyは、無料コースもあるが、基本的に有料コースの提供がメイン。Excelの使い方、マーケティング、Webデザインのような、ビジネス系やデザイン系など実務に直結するコースが多い。
Apple社が提供するiTunes Uというサービスは、2007年頃に開始されており、日本の大学も以前からコンテンツを提供している。教育機関に所属する先生に限られるが、個人が学習コンテンツを提供できるようにしている。
当然ではあるが、iPadやiPhone/iPod Touch向けのコンテンツ作成には適しているようだ。
個人の時代。大学や学校は不要になるのか?
オープンな環境が整ってくると、大学のような従来型の教育機関や大企業だけでなく、個人や小規模のチーム/企業でも、自由に教育プログラムを配信することが可能になる。
一方で、
・有名な大学教授は、自分自身で世界中から受講生を集められるので、大学を必要としなくなる
・一部の人気講師に受講生が集中し、そうでない人は職を失う
のような課題も取りざたされている。
CourseraやedXなど、大学講義系のMOOCsは、大学として参加しプログラムを提供しているため、基本的に教授が勝手に自分でコースを開設することは難しい。
ただ、もし教授が、大学の講義とは異なるプログラムを自分でオンラインで提供するとしたら、将来的に話は変わってくるだろう。個人と教育機関の関係は、変わらざるを得ない。
リアルな対面学習の場の必要性は、今後も変わらないと思われるが、オンライン学習の普及により、既存の教育機関が変化を迫られることは間違いない。edXなどの取組みは、それを視野に入れた試みであろう。
有名教授や人気講師に受講生が集中することについては、物理的な場所や空間の制約を受けないというオンラインの特性上、ある程度仕方ない。実際、MOOCsでも1つのコースに何万人もの受講生がエントリーしている。通常の対面講義ではあり得ない規模である。
では、既存の有名人だけが得するのかというと、そうでもない。有名大学の教授でなくても、オンライン講義の講師として人気を得ることが可能になるという意味で、逆に個人にはチャンスが広がっている。
YouTubeの動画配信で有名になった人もいるように。
プログラムの中身や講師自身の魅力が重要なことは、言うまでもない。ソーシャルメディアやウェブサイトを活用して、しっかりとマーケティング活動を行う事も大切である。
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