5月29日、恒例となっているメアリー・ミーカー氏の「インターネット・トレンド・レポート」最新版が発表された。(参照記事:All Things Digital)
ご存知の方も多いと思うが、ミーカー氏は元モルガン・スタンレーのIT/インターネット分野のアナリストで、現在は有名ベンチャーキャピタルであるクライナー・パーキンス(KPCB: Kleiner Perkins Caufield & Byers)のパートナー。
毎年発表され続けているこのレポートは、多くのデータに基づいてインターネット業界の動向をまとめており、将来展望を見渡す際の参考にされている。
今回のレポートの目次と大まかな内容は以下の通り。
1. Key Internet Trends
- 新興国を中心としてインターネット利用者数が増加
- インターネットユーザ数は、全世界で24億人(2012年末)
- スマートフォン向けOSシェアの変化
2. Re-Imagination
- 写真、動画、音楽、データ、ソーシャルメディアなどの利用が拡大
- 毎日5億枚の写真がアップロード&シェアされている!
- オンラインでシェアする人、世界平均24%、アメリカは15%。日本は5%以下?
3. Mobile
- モバイルユーザ数が拡大
4. Computing
- スマートフォン、タブレット利用の拡大、そしてウェアラブル技術をつかった製品の登場
5. Lots to Learn from China
- 中国のインターネット利用の伸び、アリババ、Sina Weiboなどの紹介
6. Most Enabled Entrepreneurs Ever?
- 注目起業家の紹介
7. So, You Want to Be a Public Company?
- LinkedInの業績紹介、主なインターネット企業の財務データ紹介
8. High-Skilled Immigration
- 米国の高度な技術をもつ移民に関するレポート(米国の高度技術労働者の不足問題が背景にある)
9. Appendix
- ファイナンスサービス
- オンライン教育
- その他
全般に、モバイルユーザ数の増加、インターネット上にアップ&シェアされるデータ量の増加などのトレンドが加速していることを裏付ける内容。Google Glassなどにみられるウェアラブル技術の実用化を紹介した点などが注目された。117ページの大作なので、何かしら興味を持てるデータが見つかるのではないかと思う。記事の最後に全スライドを掲載したので、ぜひ目を通してみてほしい。
オンライン教育が急成長している
個人的には、Appendixではあるが4ページ(P.98-101)も割いていた「オンライン教育」についてのレポートに興味をもった。
オンライン教育は急成長しており、
- 大学等に行くコストは過去30年で2倍以上に増加。学生ローンの総額は、過去10年で8倍になり、クレジットカードや自動車ローンの額よりも大きい。
- 2011年の時点で、32%の学生が少なくとも1つのオンラインコース受講したことがある
- 77%のアカデミック・リーダーが、オンラインコースは、対面授業と同等かそれ以上の学習成果があると認識している
という調査データ、グラフを紹介している。
2012年は、Coursera(コーセラ)やedXのような大学の授業を配信するMOOCs(Massive Open Online Courses)がサービス運営を開始した。これらのMOOCsは、世界中から多くの利用者を集め、参加大学も増えてきている。今年になって、日本からも東大や京大が参加を表明し話題になった。
コースのプログラムは、まだ対面授業を録画して配信するだけのようなものも多いが、インタラクティブな仕組みを取り入れたものも出てきている。Courseraでは、大学の授業とオンラインコンテンツを組み合わせて学習する取組みなども始めている。
インターネット技術をベースに、教育のあり方が大きく変わろうとしている。
背景には、教育の質を落とさずに、米国の大学教育コストを削減する狙いもあるとも言われており、オンライン教育への取組みはますます加速するであろう。
もたもたしているとあっという間に、世界の流れに取り残されてしまうかもしれない。オンライン学習サービス提供者の1人として、積極的にチャレンジしていきたい。
メアリー・ミーカー
「インターネット・トレンド・レポート」の全スライド
<参考記事>
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