前回の【英語で交渉】アクティブ・リスニングに失敗した例、に続き、改善ポイントを反映した成功例をご紹介します。
失敗例の問題点を整理すると、
1.相手の発言をさえぎってしまった
2.自分本位の結論に短絡してしまった
3.言葉と態度が合致していない
が挙げられました。
What Can We Do Better?
どうしたらよくなるか?
改善のポイントは、次の4つです。
1.相手の話を聞く忍耐力を持つ
お互いの利害や関心事を正確に認識するためには、相手の話を十分に聞く忍耐力(patience and mental toughness)が必要です。
それに加え、
What do you think?
What is your opinion on 〜?
のような質問をして、積極的に相手の発言を引き出す努力(efforts to invite comments)も重要です。
2.相手の真意を探り出す
相手の真意を探るには、「What-if 型」の質問が効果的です。
What if we increased the minimum required volume?
(取引高を必要最小限だけ増やしてみたら?)
What if we extended the warranty coverage?
(保証の適用範囲を拡大してみたらどうだろう?)
などの質問を投げかければ、その答えから、相手の関心事や優先順位が見えてくることがあります。
3.理解の正しさを相手に確かめる
不明瞭な箇所は、相手に確認しましょう。
Correct me if I am wrong. My understanding of your explanation is that 〜
(もし私が間違っていたら訂正してください。あなたの説明についての私の理解は〜)
Let me see if I understand you correctly.
(あなたがおっしゃることを正確に理解しているか確認させてください)
4.誠実さが不可欠
アクティブ・リスニングには、感情移入(empathizing)と誠実さ(sincerity)が不可欠です。これらが感じられないと真の理解は伝わりません。
Persuasion requires congruency between words and deeds.
(説得するには、言行を一致させよ)
では、以上の改善ポイントを考慮した成功例を見てみましょう。
<英語> Good Example:
Listening to Understand
Employee: John
Manager: Jim
—————————————————————————–
John:
Thank you for taking the time to see me.
Jim:
My pleasure. Don’t even mention it. That’s what I am here for. My office door is always open!
John:
I am glad to hear that. The reason why I wanted to talk to you was that I think we need new computer software for improving our productivity and for reducing our costs, too.
Jim:
That sounds very interesting. Would you elaborate on that? As you know, John, the whole company is striving to contain costs these days. Our department is no exception. We are also under the gun to reduce expenses by as much as 30% this year.
- *elaborate on : 〜について詳しく説明する
John:
Jim, you probably know that our operating system is way out of date. It is not compatible with what many of our counterparts in the rest of the organization use. This is producing a lot of additional manual work. As a result, we are forced to employ a lot of temporary staff.
Jim:
I see. Let me make sure that I understand you correctly. So you are saying that our current system is adversely affecting our productivity and as a result contributing to an increase in costs.
- *adversely : 不利の、マイナスの
John:
Exactly. You understand me perfectly.
Jim:
Tell me, John, do you have any idea as to how much we may be able to benefit from investing in new software?
John:
As a matter of fact, I do. Although this is still a back-of-an-envelope calculation, I think we can save at least 40% of personnel expenses in the long run.
- *personnel expense : 人件費
Jim:
40%! Wow, that is substantial. Let’s run a more detailed estimate, incorporating opinions of our system people, shall we?
- *substantial : 相当な、かなりな
- *incorporate : 取り入れる、反映する
John:
Sure thing, Jim. I will get back to you ASAP.
<日本語> 成功例:
傾聴し相手の真意を理解できた
従業員: ジョン
マネージャー: ジム
—————————————————————————–
ジョン:
お忙しいところ、お時間をいただきましてありがとうございます。
ジム:
とんでもない。そんなことありませんよ。私の仕事ですから。いつでもどうぞ。
ジョン:
そう言っていただけますとうれしいです。実は、今日お話したかったのは、新しいコンピューター・ソフトの必要性についてでして、生産性の向上そして、経費の削減には不可欠だと思います。
ジム:
それはとても興味深い話ですね。その点を少し詳しく説明してもらえますか。ジョン、君も知っていると思いますが、社全体が現在経費圧縮に努力している状況です。うちの事業部も例外ではありません。私たちも経費をなんと今年中に30%削減することを迫られているのです。
ジョン:
ジムさん、うちのシステムが相当古いものだということは、あなたも多分ご存じのはずです。当社の他の部署の同僚が使用しているものと互換性がないのですよ。このために大量の手作業が発生しています。その結果、多数の臨時社員を雇わざるを得ない状況にあるのです。
ジム:
なるほど。こういう理解でよろしいでしょうか。現在のシステムは生産性に悪影響を与え、経費の増大につながっているわけですね。
ジョン:
まったくその通りです。
ジム:
どうだろう、ジョン、新しいソフトの投資にどれくらいのメリットがあるのか考えはありますか?
ジョン:
実はあります。概算ですが、長期的には少なくとも人件費の40%程度を削減できると思います。
ジム:
40%!それは大した額ですね。システム部門の意見も取り入れて、より正確な見積を出してみてくれませんか?
ジョン:
もちろんです、ジム。できるだけ早くお答えします。
Key Expressions
Would you elaborate on that?
「その点を詳しく説明してもらえませんか?」という意味。
Would you explain more on that?
や、ストレートに
Can you tell me more about that?
でもよいでしょう。
adversely affecting our productivity
「生産性に悪影響を及ぼしている」という意味。
affect 自体、どちらかと言うと、マイナスな意味合いをもつ言葉です。意味を明確するために、adversely をつけておいたほうがよいでしょう。
has a negative impact on our productivity
と言っても同じ意味です。
contributing to an increase in costs
「経費増大につながっている」という意味。contributing や contribution などの表現はプラス要因に対する貢献と思いがちですが、基本は中立的な表現です。したがって、経費増大のようなマイナス要因に対しても使えます。
back-of-an-envelope calculation
「大まかな概算」という意味。直訳すれば、「封筒の裏の計算」となります。他に、rough estimate という表現もできます。「大まかな数字」という意味で、a ballpark figure という表現もあります。野球場での観客数をざっくりと表現するイメージです。
I will get back to you ASAP.
「できるだけ早くお答えします」という意味。ASAPは、as soon as possible の略です。
以上、【英語で交渉】アクティブ・リスニングの後半、成功例をご紹介しました。
交渉スキルについては、「【交渉力アップの基本(1)】相手の一番ほしいものをつかむ」を参照してください。
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